
山崎正和の読書:デジタル化資料選定者の眼
このアーカイブは、山崎正和の蔵書のうち書込みなどがあるものを選んでそのページをデジタル化しています。デジタル化対象を決めるには、蔵書を順に開き、どのページに書き込みや付箋があるかを確認していかなければなりません。この作業はサントリー文化財団OBの2名が約半年をかけて行ないました。その作業記録から、デジタル化資料の注目ポイントをいくつかご案内します。
山崎正和の読書傾向(芸術・思想)
記録には、読書(蔵書)の傾向として「言語に関するもの、芸術論、身体論、リズムに関するもの、社会思想、現代社会論、演劇関係(が多い)」、「若い頃は、詩に興味の中心があつた模様。北原白秋、千家元麿」などと記されています。デジタル化したものからこれらをいくつか選んでみると:
さらに「思想・評論では、海外では、バフーチン、ベルクソン、デュルケーム、クルティウス、エリアーデ、ゴンブリッチ、マンフォード、トリリング、フンボルト、コーザー、ベネディクト、フィードレル(芸術学)、カント、ヘーゲル、シェリング(人間的自由について)、スティルナー、モーリス・ブランショ。日本の評論家では、植田壽蔵、務台理作、山本健吉、中野好夫、福田恒存、風巻景次郎、ほか吉本隆明も読んでいた。」「1959年頃に、フッサールやハイデッガーを熱心に読んでいる。」とあります。
※各作者からのリンクは蔵書検索の例です。元となる書誌がさまざまであるため、複数の名前標記を組み合わせたり、姓名の間にスペースを置いてAND検索したりしています。検索のヒントも参照してください。
山崎正和の読書傾向(文学)
文学作品は演劇からミステリーまで幅広く。「作家・詩人では、トーマス・マン、ドストエフスキー、カフカ、ゲーテ、ホフマン、シェークスピア、ヘッセ、ポー、スタンダール、リルケ、アンデルセン、森鴎外、夏目漱石、宮沢賢治、北原白秋、立原道造、梶井基次郎、久生十蘭、芥川龍之介、志賀直哉」
特色のあるものとして「意外や、ロス・マクドナルド、ダシール・ハメット、イヤン・フレミングを読んでいた。」「洋書は、ゲーテ『ファウスト』をドイン語の亀の子文字で、ドイツ語でフッサール『純粋現象学、及び現象学的哲学のための考案(イデーン)』、フランス語で、スタンダールの『パルムの僧院』、『赤と黒』を完読していた。」
山崎正和の本の読み方
読書方法について、蔵書を閲覧しているとさまざま感じることがあったようです。「若い頃は、書き込みが多く、晩年は付箋や線引きのみとなるのが多い。」「栞、付箋、折り、線引き(文の横に沿って、文の上に横棒、さらにその上に〇、ゝの印)、書き込み(付箋や栞に、本の余白に)など、いろんなやり方で読んでいる。」「なんでも手当たり次第に、手元にあるものを付箋代わりに挟みこむ。例えば、喫茶店やクリーニング屋の伝票、…、爪楊枝の紙。」「一つの作品をいろんな版で持っていて、読んでいる。とくにシェークスピア。」ここでは即席栞が用いられている蔵書2点、「いろんな版」の例としてシェイクスピアの「オセロー」のデジタル化資料を紹介します。